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エイズの現状
自力でコントロールしようよ!!エイズ。
年々増え続ける新規HIV感染者・エイズ発症者の報告数
まず感染した状態で見つかる人が増加しているのは、2つの要因が考えられます。1つは、感染自体が急速に広がっていること。もう1つは、抗体検査を受ける人が年々増えているので(1999年にはゲイタウン利用者の19%が過去1年間に検査を受けていたのに対し、2008年には45%に増加した)、その分見つかる人が増えたこと。はっきり証拠があるのは後者ですが、おそらく両方の要因が働いていると思われます。
次に、ゲイ・バイ男性の占める割合に注目すると、厚生労働省が把握している割合は現実を忠実に反映しているわけではなく、実際にゲイ・バイ男性の占める割合は8~9割に上ることが臨床の現場から報告されています。つまりHIV感染症は、少なくとも大阪においてはゲイ・バイ男性がとても罹りやすい病気といっても過言でない状況があります。
この要因としては
(1)直腸粘膜が非常に感染しやすい部位であること
(2)性的ネットワークが濃密になりやすいこと
(3)これらの情報がすべてのゲイ・バイ男性には行き渡っていないこと
などが考えられます。
年々自発的に検査を受けて感染がわかる若者、発症してからわかる中高年
次に【大阪府の患者・感染者報告数2008年分】をご覧ください。ここには、年齢層による違いがはっきり表れています。つまり、若い人たちは感染した人自体の数も多いけれども、感染の状態で見つかる割合も高い、ということがあります。感染した人自体の数が多いということは、ウイルスが20歳代、30歳代の人たちのあいだに広がっていることを示しています。ただ、この世代は自発的に抗体検査を受けて自分で見つける場合がずっと多いのに対し、50歳代以上だと発症した状態で見つかる人が半分程度います。この、自分で見つけるか病院で見つかるかの違いは、その後の生活の質に決定的な違いをもたらします。
年齢層別の行動の違いを詳しくみるために、MASH大阪と名古屋市立大学が2007年に共同で実施したバー調査の結果を見てみます。下の3つのグラフを総合すると、大阪のゲイ・バイ男性は40歳を超えると性行動は不活発になるが予防・検査行動は衰えないのに対し、50歳以上の層では予防・検査行動が極めて不十分なことがはっきりと示されています。50歳という年齢を境目に、なぜこれほどまでに予防・検査行動に差が出るのか、私なりの仮説を立ててみました。
仮説(1)
50歳以上のゲイ・バイ男性の多くは結婚しているから、ゲイ・バイ男性の性的健康維持に必要な情報にアクセスしにくい。
仮説(2)
50歳以上のゲイ・バイ男性は、80年代に吹き荒れたエイズに対する偏見・差別の嵐にさらされたから、当時のエイズ・イメージが固定され、90年代後半に起こった疾病観の劇的な変化にシンクロしていない。
仮説(3)
50歳以上の世代は若い世代に比べアナルセックスがそれほど普及していないので、「エイズは若い人たちの病気」というイメージが固定され、自分自身のリスクと向き合うことが難しい。
これら3つの仮説のどれが正しいのか、あるいはどれもそれなりに正しいのか、検証するためにはリサーチが必要ですが、皆さんはどう思われますか?
100%コンドーム使用群はHIV検査受検割合が比較的高いが、50歳以上は40歳代の1/2である。50歳以上は、どの群もHIV検査受検割合は他の年齢より低い。
なぜ自分から検査を受けたほうがいいのか
大阪府在住のゲイ・バイ男性の人口は、おおざっぱに見積もって15万人程度と推測されます。
このうちゲイタウンを利用するゲイ・バイ男性は3~4万人であることが、MASH大阪の調査で分かっています。さて、この15万人のゲイ・バイ集団は、HIV感染という観点からは3つの層に分けることができます。
■第1層:まだ感染していない層 ■第2層:感染しているがそのことに気付いていない層 ■第3層:感染したことが分かっており、治療を受けている層
予防の観点からは、第1層にそのままの状態を維持するよう働きかけることを一次予防、第2層に検査を促し、医療につながるよう働きかけることを二次予防、第3層が受けている医療や福祉のサービスを三次予防といいます。なぜ医療や福祉が予防に位置づけられるかというと、医療や福祉サービスを受けたことで当事者の生活の質が上がれば、結果的に彼らの持つウイルスの量は減少し、ひいてはコミュニティ全体のウイルス量が低下し、そのことを通じてコミュニティ(この場合は大阪のゲイ・バイ男性の総体)全体のHIV予防が前進することになるからです。
90年代の半ばまで、確かにエイズは「死に至る病」でしたし、そのイメージを引きずっている限り、積極的に病と向き合おうという態度は生まれにくくなります。しかし90年代後半以降、この病をめぐる現実はすっかり変わりました。発見が早ければ慢性疾患のひとつと考えることができるようになりましたし、その場合、服薬と仕事の折り合いをどうつけるか、薬の副作用とどう折り合いをつけるか、が課題になります。いずれにせよ、病の影響を自分で管理できる範囲に止めることが可能になり、ウイルスを身体から駆逐することはできないとしても、服薬を続ける限り、未感染の状態に近づくことができます。
発見が遅ければ状況は全く異なってきます。ウイルスの影響で免疫が下がりすぎると、日和見感染症が出て視力を失ったり、脳に障害が残ったりすることがあります。そうなると自分の力だけで生活を続けることが難しくなり、たとえば要介護の若者の世話を親が引き受けるとか、要介護の中年男性をパートナーが世話している、というような状況があたりまえに起きてきます。介護する側の負担も大きくなります。
「家族に知られるとまずい」 「どうせ死ぬんだから……」 「もう若くはないから関係ない」といった理由づけはもはや言い訳でしかない時代になりました。感染していたとしても、発見が早ければ自力でコントロールできる病。21世紀になってHIV感染症はそういう病になったのだと思います。
(MASH大阪 代表 鬼塚 哲郎)
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